轟音の正体
チャシマンちび助と"まだら子"ともちゃんには最近恐れているものがあった。それは台所から聞こえる轟音なのだった。
それは先週金曜の夕方だった。
トラ娘と一緒にピザを食べようということになり、電子レンジのスイッチを入れると、グオングオン、グオングオン、グオングオン、グオングオンとものすごい音が鳴り響いた。
大丈夫かなと思って電子レンジの脇を手で抑えると普段よりは大きめの音だがましになる。いったん止めてからスイッチを入れると、やっぱり轟音がなりひびく。仕方がないので電子レンジの脇を手で抑えながらピザを暖めることにした。
1分半ほどすると何かいつもと違う匂いが漂ってきた。スイッチを止めて中を見ると、ピザは全然温められていないことが判明。異臭といい全然暖められていないことといい、これは壊れたんだな。
時間はかかるけどオーブントースター機能で暖めよう。「電子レンジ壊れました〜!ちょっと時間がかかるけど、オーブンで暖めるね」とトラ娘に話しかけながら台所を出ると、リビングでチビ助が恐れおののいた表情でこちらを凝視していた。
まん丸に目を見開いて腰を落とし、尻尾は巨大猫じゃらし状態に膨らんでいる。背中の毛も逆立っている。
「どうした、ちびちゃん」と声をかける途中で脱兎のごとく寝室の方に逃げていった。ともちゃんの姿は既になかった。
よほど「グオングオン」の音が怖かったのだろう。ちび助はその夜ずっと私のことを遠巻きに見ていて、ちょっと低い声で「グオングオン」と電子レンジの真似をするとダダダッと腰を落として逃げていく。
ちび助の様子を見ていると、どうも何かで私が激怒していて、台所に行っては猛り狂って唸り叫んでいると思っているようだった。
その怖がり具合は半端じゃなくて、北野天神縁起絵巻に出てくる雷神のように、怒髪天を衝くものすごい形相で怒り狂う私を想像しているとしか思えないのだった。
普段あれだけ文句をたれて、敷き布団や絨毯扱いをして、「メシー、メシー、おやつー!」とストーカーをして全くの下僕扱いなのに、あの怖がりよう。チャシマンの頭の中で私ってどんなイメージなんだ? 雷神が下僕をしているとでも思っているんだろうか?
最初は正直ちょっとムカついたのだけれど、あまりのビビりように途中から面白くなっちゃって、ちょっと可哀想かなと思ったんだけど、何度か「グオングオン」と言っていたずらをしちゃった週末だったのだった。
(3月5日3:22am)