テルさんとデブ丸

ほとんど毎日必ず通る場所がある。

今は椿でいっぱいの桜並木の坂道。

ここには野良のニャンコが２匹いた。

年齢不詳の鯖虎雌の「テルさん」と、

その弟だろうと思われる「デブ丸」。

トラ娘がつけたわが家での呼び名だ。

彼らは避妊・去勢手術を受けていて、

自らの立場をわきまえた暮らしぶり。

だから可愛がる人も少なくなかった。

でも、この３カ月半ほど姿を見ない。

雨風がひどい時、台風が来た時は、

彼らの安否が気になってしまう…。

お隣の某区では春から夏にかけて、

心ない行為で何匹もの猫が死んだ。
野良を虐待する人の話も時々聞く。

近所ではそんな話はきかないけど、

だとしたら、テルさんとデブ丸は、

どこでどう暮らしているのだろう？

自ら縄張りを移して去ったのか、
彼らなりの天寿を全うしたのか、
それとも……。

行きは雨になりそうな坂を下って、
帰りは雨になった坂を上がりつつ、
テルさんとデブ丸をついつい思う。

そして家では……。

文句が多いTabbyこと「ちび助」、
実は君は幸せなのよ、分かってる？

夕飯のヒジキが気になるアナタ、
Marbleこと「ともえ」ちゃんも
なかなか良い猫生じゃないかな？

みんな幸せに暮らしてほしい。
青臭いけど、真剣にそう思う。
でも現実は厳しくて、切ない。