キンチョー & デロリーン
「おばちゃん、アタシちょっと心配なの」
夕飯の後、"まだら子"ともちゃんが言った。「後ろから変な妖気を感じる。せっかく一人でくつろいでるのに…キンチョー感が抜けきらないの」
確かに。違う方向を見てはいるけれど、虎視眈々と狙っているっぽいチャシマンちび助の存在感は、ただデカいからだけではないような気がするよね。大丈夫、今日は私が守ってあげる。
「今日は失敗しないでね。失敗したら美味しいカリカリねっ♪」
そして、チャシマンちび助の邪な企みは果たされることはなかった。
その深夜。
望みが果たせず、ぐれ(ぐで?)てます。
ちび助は1歳から2歳になる頃、この椅子の背もたれ中央の割れ目から顔を出し、両前足を背もたれの両側から出して、デローンと座るのがお気に入りだった。
よく写真を猫好きの友だちや知り合いに見せて笑ったものだったのだけど、最近はやらない。
どうも体が大きくなっちゃって、その体勢だと胴体が座面からこぼれちゃうらしいのだ。懐かしくなって写真を探したのだけれど、見つからない。
久しぶりにそれっぽい格好をしたので、「あれ、やらないの?」と尋ねてみました。回答は「わあぁ〜、おわぁ〜、んーがぁ〜んがっ!」とのことでした。
え、意味? ぜーんぜん、分かりませんです(笑)。
でも、想像するに、「あの格好するの、ちょっと大変なのよ、なんでか分かんないけど」ってことじゃないかと思われます。
☆ ☆ ☆
月曜の夕方、品川・御殿山を歩いてた。商業施設と住宅地の間に広がる鬱蒼とした植え込みの脇、まっすぐ延びる小道にさしかかった時だった。ザザザザザッ!とものすごい勢いで植え込みの中を何かが移動している。
え、なに!?
おののきながら音のする方向を見ると、まだまだ半人前っぽい雀が一匹、そしてそのすぐ後をやっぱりお子ちゃまっぽい茶トラ猫が追って飛び出してきた。
せっかく狙った獲物をタッチの差で逃しちゃったらしい茶トラ君。雀の飛んでいく先を見つめてる。
「逃げられたの?」声をかけたらギクッとした顔でこちらを振り返った。「え…、見られてた!?」ってな感じで。
目が合っても逃げないのでこっちをじっと見てる。思わず近寄ってみると、ちょっとだけ植え込みの方に戻ったかと思うと、置物と化してしまった。
「あのね、あなたがさっき見たのは錯覚なんです。僕は置物なんです」
そうなのねー、私はどうも夢を見てたみたいねー。置物だったら写真撮ってもいいよね?
パチリ。ついでだからしげしげと観察させてもらった。
人を恐れる様子もなく、でも、飼い猫って感じでもない。まだ1歳にならないんじゃないかと思われる若者という風情で、毛並みもきれいでなかなかのハンサムボーイ。手元にあったのがガラケー型のPHSだったからカメラ機能がイマイチで少し残念。
用事をすませて戻った時には、やっぱり彼はいなかった。もしかしたら彼女だったかなぁ、でも顔つきや身のこなしは男子のものだった。
戻った時に彼がまだいたら、連れ帰っていたかもなー。
一時は4匹いた猫たちも今はチャシマン&マダラン組の2匹だけ。今はいないノッチ、シーちゃん、ノンノンのいた場所は今もぽっかり穴が空いたようで、時々無性に寂しくなる。
またいつか新しく家族が増えるかも知れない。でも、出あっちゃう時は実はこちらで選ぶことはできない。思いがけない時に出あってやってきてしまうものなのだ、猫って。
つくづくそう思うのは、私だけ?
(June 16th 0:47am)